2011年5月17日火曜日

三帖ほどの、

三帖ほどの、小さな書店の中にいる。両側の壁は一面、天井まで木製の本棚で埋められ、奥の壁に埋め込まれた唯一のガラス窓のそばに、店の主人であろう老夫婦が並んで椅子に座っている。
私は本を手に取ってはパラパラめくり本棚に戻す。
それを何度か繰り返すうち、
―― 電車の時間だ。帰らなくては。
と思い店を出ようとするが、扉が重くて開けることができない。
しばらく押したり引いたりしていると、先ほどから椅子に座り人形のように動かなかった老婦人がやってきて、
「コツがあるんですよ」
と容易く扉を開ける。
私は礼を言い店を後にする。

扉の外はプラットフォーム。発車ベルが鳴り、私が飛び乗ると同時に列車は出発する。
私は鞄を店に忘れてしまったと慌てるのだが、中身は空っぽだということを思い出し、まあいいかと安堵する。

(2011.05.16 夜)

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