友人Yと記録映画の撮影をしている。事故を起こしたスペースシャトルの残骸が、この大きな中学校の校舎にうち捨てられているというのだ。
体育館の舞台袖では数人の女生徒が壁際にならんだ椅子に腰掛け無言のまま化粧にいそしんでいた。芝居の開演が迫っているようで、カメラを向けてもこちらには目もくれない。
体育館から教室が並ぶ校舎へとつながる渡り廊下では、めがねを掛けた細身の男とすれ違った。やはりこちらへ視線を向けることはなく、口元を抑え不気味な笑い声を漏らしている。
靴箱のならぶ正面玄関から外へ出て、校舎を時計回りにぐるりと廻る。よく晴れた青い空。黄色い雲が浮かんでいる。
裏門を出ようとした私たちの前に、突然スペースシャトルの残骸が現れる。大小の破片が無数に散らばり、せき止められた側溝から濁った水があふれている。周囲に人影はない。目的のものを見つけた私たちではあったが、大きな機体の脇にどうしたわけか行儀良く三つならんだ一斗缶に、むしろ惹きつけられている。私たちはカメラを回すのも忘れ、黄色のラベルに赤く太い文字で「タレ」と書かれた一斗缶を指さして笑い続けている。
(暗転)
10m四方ほどの、窓のない殺風景な部屋。中央にパイプベッドが一つ置かれ、子供の頃の友人Kが腰掛けている。
—— やあ、久しぶり。中学生以来だね。最近どう。
会話の糸口を探していると、Kは私に鋭い視線を向け一方的に話し始めた。曰く、市の商工会のコンペに自分が撮った記録映画を出品したのだと。日雇い労働者の日常を撮り続けていたのだと。コンペの結果はもうじきかかってくる電話で分かるのだと。
言葉を挟む余裕もなく、Kの話をじっと聞いていた私は、背中にじわりと汗がにじんでいくのを感じていた。
(2012.01.28 夜)