2011年5月8日日曜日

映画で人体解剖のシーンを...

映画で人体解剖のシーンを撮影するのだという。
遺体は手に入った。ところどころ既に傷み赤茶けた色味を帯びてしまってはいるが、撮影関係者は皆「とてもいい状態だね」と口をそろえている。
さあ撮影だ。私たちは意気込んで遺体を解剖台に乗せスタジオへ運ぼうとするが、何時まで経っても辿り着けない。遺体の腐敗は進んでいき、見慣れたはずの私たちも目を背けたくなるほどだ。
スタジオへ辿り着けない原因は分かっている。この遺体を取り返そうとしている人々に妨害されているからだ。親族だろうか。多分そうなのだろうと皆考えているが、渡すわけにはいかないのだと強く感じている。
このままでは撮影できない。私たちは往来の真ん中で撮影を決行する。道行く人達が遺体を眺め顔を歪めては去っていく。私は監督に「カーテンを用意しなくては」と言うのだが、監督を含め周りのスタッフは皆黙々と撮影を進行させていくばかり。
私は撮影には加わらない。囮となり遺体を取り戻そうする人たちを現場から遠ざけねば。私は走り近くの大型書店へ滑りこむ。
「ああ、ここはあの街にあるあの書店か」
そう考えながら2階、3階へと階段を駆け上がっていく。
追っ手はもう遺体への興味を失っているようだ。すでに一人になっており、書店内で友人を見つけたらしく、楽しく談笑を始めている。その友人は私の知り合いでもあるが、声を掛けることはできない。

(2011.05.06 夜)

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