学園祭の準備に忙しい。
何を作っているのかは判然としない。夜の校舎に泊まり込んでいるようで、皆が木の板に釘を打ち付けたり、スチール棚を移動させたり、慌ただしく動きまわっている。
クラスの中心であるYが「ネジがない」と騒ぎ始める。
何に使うのかは分からないが、ネジがないと困ったことになるらしい。
心当たりのない私は、寄り集まり騒いでいる皆を尻目に足りなくなった釘を補充しようと立ち上がる。
突然左の袖を引っ張られた。振り返った先には、あまり口をきいたこともなかったクラスメイトのSがうつむき加減で立っていた。
Sは私を二つ隣の教室へ連れて行く。
教室に人気はなく、折り紙の鎖が天井一面に飾り付けられ、廊下の電灯に照らされオレンジ色に染まっている。
黒板の脇には、横倒しにされた自転車が一台転がっていた。
Sは自転車の傍にしゃがみ込み、床を指さし私を呼び寄せる。
その指先へ目を遣ると、リノリウム製の床の継ぎ目が、石膏で埋められているのだろうか、不自然に盛り上がっている。
Sと並んで床に腰を下ろし、石膏の膨らみを爪で削っていると2cmほどの小さなネジが現れた。
Sは、同級生のHがネジをここへ埋めているのを見たのだという。
私にはHがそのようなことをするとは思えなかったのだが、とりあえずネジを手に元の教室へと戻ることにした。
いまだ騒ぎの収まっていない教室の真ん中で腕を組むYに、ネジを見つけたことを伝えると、Yは「どうして、誰が?」
と私に詰め寄った。
私は教室の入り口に立つSへ視線を向けるのだが、Sは言い出しづらそうに目を逸らしている。
私もただ、黙っている。
(2012.03.23 夜)
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